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<<   作成日時 : 2009/02/20 17:03   >>

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 村上春樹ファンの方のために,少しだけ真面目に「私にとっての村上春樹」を記しておきます。学生のころから都合数冊読みましたが,「うっかり語れない」と,当時も今も思います。ひたすら無感動に話が進むのに,つまらないわけではない。劇的な場面でも自分を他人事のように扱う主人公がカッコよくもありスカしているのでもあり。何かすごい深いことを言おうとしているように見せて,実は当たり前のことを言おうとしているのでもあり。かといってあまのじゃくだと切って捨てるような単純さではない。……村上春樹について語りたい人が多いのは,いつも霧雨の向こう側を見通そうとしているような気持ちを読者が持たされるから,向こうに何があるのかをあてっこしたくなるのじゃないのかな,と思います。本当は霧雨はそれ自体を家から眺めてるのが一番いいんですが。



 「伊集院光のばんぐみ」の再放送で,みんなで紙芝居を作ろう,という企画をやっていました。三匹の子ぶたを,若手芸人みんなで紙芝居にするということなのですが,誰もが知っている「三匹の子ぶた」が,人によって話が違ってくるのがとても興味深いのです。

1.物語の冒頭,三匹の子ぶたの他に両親がいた説。母親がいた説。いきなり三匹だった説。
2.家を吹き飛ばされた二匹の子ぶたは食べられた説。三男の家に逃げ込んだ説。
3.二匹目の木の家は燃やされた説。吹き飛ばされた説。
4.狼はレンガの家の煙突から入ろうとして,鍋で煮られた説。逃げおおせた説。

 私の記憶と同じものもあり,違うものもあり,結局どれが本当かよく分からない。番組内ではもっともそれっぽいものに合わせる形で話が進んでいきましたが,ほんとのところどうなんだ。というか「ほんと」って何だ。「本当は怖いグリム童話」みたいなのもありましたが。

 奥さんに聞いてみました。奥さんは仕事柄絵本や昔話を勉強していて,「昔ばなし大学」なる市民大学で講義を受けたりして,とにかくそこいらの人たちよりは昔話に詳しいことになっています。雑談のつもりで聞いてみたら,「ちょっと原典をあたる」といってベッドを飛び出していきました。なんで原典持ってんだろう。結果正解は以下のとおり。


1.スタートはお母さんブタがいる。お母さんが養っていけなくなって,お前たちもひとり立ちしなさい,と言われる。
2.わら,木の枝,レンガは,それぞれ出くわした人が持ち合わせていたものをもらってそれで家を作った。二人が横着したとか三男が賢かったのでレンガ,というくだりは一切なし。
3.わらも木の枝の家も,それぞれ吹き飛ばされ,二匹はしっかりとオオカミに食われる。しかもそれっきり。赤ずきんみたいに後から助かるシステムはなしです。逃げる話は,ディズニーがアレンジしたもの(ここは奥さん知識)。そもそも物語の最初から,三匹がコミュニケーションをとるシーンはない。
4.オオカミがレンガの家の煙突ミッションに行く前に,いくつかの出来事がある。
 1)まずオオカミは,畑にかぶを取りに行こうと誘う。6時の待ち合わせをしたが,オオカミが来る前に三男が先に行って全部食べてしまう。
 2)今度は一緒にリンゴを取りに行こうと誘う。これも似たパターンで失敗。
 3)次は,市場で買い物をしようと誘う。これまた先に市場へ行った豚は,たるの中に入って坂を転げ落ちてしまう。後から来たオオカミはたるに轢かれてひどい目にあう。
5.4.3)からオオカミさすがに激怒。煙突から中に入ろうとするが,暖炉ではお湯がぐらぐら煮えていてオオカミ茹で上がり死ぬ。子ブタはオオカミを食べてその後も幸せに暮らしました。おしまい。

※ 原作はイギリスの童話なのだそうです。


 昔話というのは純粋な子供のころに聞かされることが多く,それだけに誰もが自分の知っている話が正解なんだ,と素直に思い込みやすいわけですね。私が知っているこの話は,たぶんディズニーものだった。思い返すと,小さいころ家にはディズニーものの絵本が何冊かあった気がするし。


 奥さんに言わせると(たぶん昔ばなし大学などで聞いたことなのでしょう),ディズニーのそれのように,子供に残虐なシーンを連想させて怖がらせたくない,といった理由で,意図的に原作と違う話や結末にした絵本を出版する,ということが普通に行われるようになっているが,必ずしもそれがいい方向へ働くとは限らないということです。

 例えば三匹の子ぶたは,最後オオカミは逃げていく終わり方のものもあります。しかし,それを読み聞かされた子供が,その後外出を極端に嫌うようになったそうです。子供にとっては,恐ろしいオオカミが死なずにまだどこかにいる,ということのほうが強い恐怖に映ったようです。大人が持つ「やたらと死なず,最後はみんな仲良しになってほしい」といった配慮は,子供には通じないのですね。

 昔話にそれほど興味もない私ですが,こういう話を聞くと「教養って大切だな」と素直に思います。役に立つか立たないかよく分からない昔ばなし大学とやらに,早起きして出かけていく奥さんを感心半分ようやるなぁ半分で見てましたが,人間として豊かってのはそういうことなのだろうなあ。昔ばなし大学,やってるのはオザケンのお父さんらしいです。関係ないのですが,オザケン(昔の)と村上春樹ってなんとなく私の心のマップでは近所同士で住んでいます。なんでやろ。

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